経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)は、決算が赤字であっても直ちに不許可になるわけではありませんが、事業の「継続性」が厳しく審査されるため、慎重な対策が必要です。 特に2025年10月の法改正により、資本金要件の厳格化(3,000万円以上)や経営実態の確認が強化されており、赤字状態での更新ハードルは以前よりも高くなっています。
赤字の状況による判断として、「事業の安定性・継続性」の観点から入管は決算状況を以下の4つのパターンで評価します。
(1)単年度赤字(債務超過なし)
更新できる可能性は高いです。一時的な赤字の理由と、翌期以降の改善見込みを説明します。例えば、設立1年目の赤字については、2年目以降に比べて比較的柔軟に審査される傾向にあります。入管も、事業の立ち上げ初期(スタートアップ期)には設備投資や広告宣伝費などの先行投資がかさみ、利益が出にくい実態を理解しているためです。その赤字が、事業計画に基づいた想定内のものであることを説明する必要があります。例えば、備品購入、店舗内装、採用費、マーケティング費用などの支出です。
対策としては、決算書だけでなく「補足説明書」を添えて、なぜ赤字になったのか、現在はどのような進捗か(売上が上がり始めているか等)を伝える必要があります。次に翌期以降の「事業継続性」を説明します。「1年目(前期)は赤字だったが、2年目(翌期)はこうして黒字化する」という具体的な根拠が求められます。直近の取引実績や契約締結状況を盛り込んだ、現実的な次年度計画書を提出します。
2025年10月の法改正に伴う「3年間の経過措置期間」においては、既設企業(設立2年目以降)についても赤字の理由や改善計画の合理性が認められれば、更新の可能性は十分にあります。外部環境の急変(パンデミックや地政学リスク、急激な為替変動など)や、一過性の市場の冷え込みが原因による「一時的」な要因による赤字であることの客観的証明、単年度の赤字であっても、過去の蓄積(内部留保)により純資産がプラスに保たれていれば、事業の継続性は評価されます。
(2)2期連続赤字(債務超過なし)
入管の審査基準では、単年度の赤字よりも「事業の継続性」が極めて厳しく疑われるため、2期連続赤字での更新は、自力での申請はリスクが伴います。専門家(行政書士や中小企業診断士)へご相談されることをお勧めします。
過去の蓄積(内部留保)があり、2期連続赤字でも純資産がプラスに保たれているなら、更新の可能性は残ります。2025年10月からの経過措置期間中(3年間)であれば、「事業計画の合理的な修正」を詳しく説明します。「3期目こそは黒字化する」という、具体的で実現可能な売上目標やコスト削減策を示すことが不可欠です。
今回(2025年10月)の改正により、経営実態の確認が強化されています。2期連続の赤字は「経営能力が不足している」とみなされやすいため、以下の点もチェックされます。
- 役員報酬の支払い: 会社が赤字でも、自分自身の給料(月額20万円〜)を削らずにきちんと支払えているか(生活の安定性)。
- 事業の実態: 実際に売上が発生しているか、あるいは受注の見込みがあるか。
(3)債務超過(資産 < 負債)
倒産のリスクがあるとみなされ、審査が厳しくなります。中小企業診断士や公認会計士による「事業改善の見通しに関する評価書」などの提出が強く推奨されます。「事業の継続性がない」と判断されるリスクが極めて高く、更新が非常に難しくなります。
債務超過(さいむちょうか)とは、簡単に言うと「会社のすべての資産を売り払っても、借金(負債)を返しきれない状態」のことです。貸借対照表(バランスシート)で見ると、右下の「純資産の部」がマイナスになっている状態を指します。
<1期目の債務超過>
設立直後などは設備投資や広告費などの先行投資がかさむため、資本金(500万円〜)を一時的に食いつぶしてマイナスになることは珍しくありません。
- 審査の視点: 「スタートアップ特有の一時的な状態」と見なされます。
- 更新の条件: 「なぜマイナスになったか」の合理的な説明と、「2期目にはプラスに転じる(または改善する)具体的な事業計画」を提出すれば、更新が認められる可能性はあります。
<2期連続の債務超過>
1期目の赤字を2期目でリカバリーできず、さらにマイナスが拡大した状態です。これは「経営能力の欠如」や「ビジネスモデルの破綻」と厳しく評価されます。
- 審査の視点: 「このまま日本にいても倒産するだけで、経営活動を継続できない」と判断されます。
- 更新の条件(極めて厳しい): 単なる自己申告の事業計画書では不十分です。中小企業診断士や公認会計士などの国家資格者が作成した「事業改善の見通しに関する評価書(意見書)」の提出が、実質的な必須条件となります。
- 不許可リスク: 専門家の評価書があっても、改善の見込みが「具体的かつ客観的」でなければ不許可になるリスクが高いです。
【重要】2025年10月改正後の「経過措置」における注意点
改正により、新基準(資本金3,000万円以上)への適応が求められる中で、2期連続の債務超過は「3,000万円という高額な投資・経営実態を維持できていない」とみなされ、以前よりもさらに厳格にチェックされます。
(4)売上総利益(粗利)がマイナス
売上総利益(粗利)がマイナスの状態は、経営管理ビザの更新において、単なる「最終的な赤字」よりもはるかに深刻な事態とみなされます。入管の審査官は、これを「ビジネスモデルそのものが破綻している(事業の継続性がない)」と判断する可能性が非常に高いため、慎重な対応が必要です。
⚫︎売上総利益マイナスがなぜ厳しいのか
通常、ビジネスは「売上 - 原価 = 利益(粗利)」となります。これがマイナスということは、「売れば売るほど損をする」状態です。
- 入管の視点: 「商品を仕入れて売るだけ、あるいはサービスを提供するだけで赤字なら、経営を続ける意味がない」「日本に在留して経営を行う実態がない」と厳しく評価されます。
- 経営能力への疑念: 2025年10月の法改正で強調されている「実態のある経営」において、原価割れの商売は「経営判断が著しく不適切」と見なされやすいです。
⚫︎更新における審査のポイント
売上総利益がマイナスの状態で更新を目指すには、以下の特殊な事情を論理的に説明し、立証する必要があります。
- 棚卸資産(在庫)の影響: 廃棄処分や評価損を一気に計上したため一時的にマイナスになった。
- 先行投資的な原価: 立ち上げ期で、将来の売上のための直接的な外注費や仕入が先行し、売上計上が翌期にズレた。
- 外部環境の激変: 急激な円安や原材料の高騰により、価格転嫁が間に合わなかった一時的な事象。
⚫︎必要な対策
この状況で更新申請を行う場合、通常の書類だけでは不許可のリスクが極めて高いです。
- 詳細な理由書: なぜ原価割れが起きたのか、一過性の要因であることをデータで証明する。
- 改善済みの証明: 申請時点で既に価格改定や仕入先の変更を行い、現在は粗利が出ていることを示す試算表や通帳のコピーを提出する。
- 専門家の意見書: 中小企業診断士などによる「現在のビジネスモデルは修正されており、継続可能である」という客観的な評価書。
売上総利益のマイナスは、「債務超過」と同等か、それ以上に危険なサインです。特に2025年10月以降の経過措置期間中であっても、「経営実態」を疑われる最大の要因になります。
事業計画書(改善計画書)に盛り込むべき項目
(1)赤字・債務超過の発生原因の特定(過去の分析)
単に「売上が足りなかった」ではなく、決算書の数字に基づいた具体的な理由を記載します。
- 外部要因: 原材料高騰(〇%増)、円安の影響、主要取引先の契約終了など。
- 内部要因: 新規事業への先行投資、広告宣伝費の集中投下、店舗改装費用など。
- ※「一過性の要因であり、経営能力の欠如ではない」ことを論理的に説明します。
(2)具体的な改善施策(アクションプラン)
「頑張ります」という精神論ではなく、「何を・いつ・どう変えるか」を明記します。
- 売上向上策: 既存顧客への単価アップ交渉、新規販路(EC・海外等)の開拓、締結済みの新規契約(発注書の写しを添付)。
- コスト削減策: 外注費の内製化による原価率〇%カット、不採算部門の撤退、固定費(家賃・通信費等)の見直し。
(3)今後の収支計画(数値シミュレーション)
向こう1〜3年分の損益計算書(PL)の予測を作成します。
- 月別収支: どのタイミングで「単月黒字」になり、いつ「累積赤字」を解消できるかを示します。
- 現実性: 前期の数字と比較して、飛躍しすぎない現実的な成長率(根拠のある数字)で構成します。
(4)資金繰り計画と安定性(キャッシュフロー)
「利益が出るか」だけでなく「手元に現金があるか」が重視されます。
- 役員報酬の確保: 赤字の中でも、経営者自身の生活費(月20万円以上など)が安定して支払われる計画であること。
- 資金調達の実績・予定: 役員からの増資、金融機関からの融資、親族からの借入など、倒産リスクがない証明。
(5)経営者の経歴と強み(経営能力の再アピール)
2025年10月の改正では「経営能力」がより厳しく問われます。
- 過去の職歴や専門知識が、今の改善計画を遂行する上でどう活かされるかを強調します。
(6) 第三者(専門家)による評価
2期連続赤字や債務超過の場合、自社作成の計画書だけでは信頼性が不足します。
- 中小企業診断士や公認会計士の意見書: 「この計画には合理性があり、事業の継続が可能である」というプロの署名入り評価書を添付することで、許可の可能性が飛躍的に高まります。
審査官は「改善計画の根拠(エビデンス)」を最も見ています。
手元に「既に決まっている新規の仕事の契約書」や「増資したことがわかる通帳のコピー」などはありますか?これらがあれば、計画書の説得力が一気に増します。
補足
特に重要なポイントを補足します。
1. 「3,000万円基準」への着地見通し
経過措置期間中(〜2028年10月)は、旧基準(資本金500万円等)での更新が可能ですが、審査官は「この経営者は2028年以降の新基準(3,000万円)に適応する意思と能力があるか?」を見ています。改善計画書の中に、「利益を積み増して自己資本を3,000万円まで育てる」または「段階的に増資を行う」といった中長期的なマイルストーンを書き込むことが、長期の在留期間(3年や5年)を得るための鍵となります。
2. 「客観的な証拠資料」の威力
赤字の際、言葉だけの計画は「願望」とみなされます。
- 新規契約書・発注書: 「明日から売上が上がる」証拠。
- 増資後の通帳: 「会社が倒産しない」証拠。
- 専門家の評価書: 「プロが認めたビジネスモデルである」証拠。
これらをセットにすることで、審査官の「主観的な不安」を排除できます。
3. 法令遵守(税金・社会保険)の重み
赤字以上に致命的なのが、「税金・社会保険料の未納」です。
- 「税金・社会保険料の未納」は、「公的義務の放棄」であり、素行善良要件に抵触します。
- 赤字で資金繰りが苦しくても、これらだけは完納している、あるいは正規の手続きで猶予を受けていることが、更新の絶対条件です。
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